〔9〕





 人生、何が起こるかわからない。

 そんな言葉を、凛子はいま、心の底から噛みしめていた。普通に大学を出て普通に就職をして、普通に?恋愛もして────辛い別れを経験して以来、自分にはもう仕事しかないと思っていた。会社に入ってからできた、まったくタイプの違う親友の由風には、「あんたは恋愛方面に鈍いんじゃなくて、単に怖がってるだけだ」とハッキリ言われたこともあって、いまとなってはそれは真理だったのだとしみじみ実感する。何故なら……明人に、出会ってしまったから───────。

 初めは、何とも────否、あくまで仕事方面で頼りになる人がやってきてくれてよかったと思っていた。これで、我が営業部の成績もぐんと上がると素直に喜んでいた。だから、容姿もいい明人が他の女子社員に声をかけられまくっていると聞いても、「まあ若い人はいいわねえ」などと「どこのババだよ」と由風に呆れられるような感想しか出てこなかったのに。すべてが変わったのは、あの晩のこと。蘭子の結婚を知らされた翌晩のことだった。いつものように由風に愚痴り、女同士気楽に飲んでいたつもりだったのに。その翌朝目覚めた時の違和感は、ある意味予兆だったのか。

『凛子さんは、可愛いですよ…と。ダメだ、つい敬語になっちゃうな』

 と、凛子の涙が流れきり嗚咽もおさまって、明人の胸の中で半ば放心状態に陥っていた時に耳元でささやかれた言葉がよみがえる。すべてをさらけ出した凛子が「自分から離れたほうがいい」と告げたにも関わらず、「貴女は悪くない」と言い切った明人。いままで、誰にそう言われても自分が悪かったのだという思いを捨てられなかったのに。まるで、氷山の氷のように凍りきってガチガチになっていた心を、明人はあっという間に溶かしてしまった。まるで、魔法のように。

『何で……こんなに簡単に私の中のこだわりをなくしてしまえたの? 由風にどれだけ慰められても、絶対に消えない楔(くさび)みたいになってたのに』

 いままで全身を固めていた意地も虚勢も取り払ったまま、素直に訊いた凛子の前で、明人は笑って答えた。

『って…ほらよく言うでしょう? いつだって、お姫さまにかけられた呪いを解くのは、真実の愛をたたえた王子さまなんですよ』

 いつもは気障ったらしいセリフを平気で吐く明人もさすがに気恥ずかしかったらしく、かあっと頬を赤らめてから「…なんてね」と続けた。そんな様子が何だか可愛らしくて、凛子は思わずクスッと笑ってしまった。

『ほら。そうして素直にしているのが一番可愛い。俺の前では、いつもそうしていてほしいな』

 と、油断しきっている時に言われたものだから、凛子の顔が一気に熱を帯びる。

『や…だ、そういうこと言わないでっ』

 ある程度の冷静さを取り戻したいまとなっては、恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がない。

『なんで。ほら、そうやって恥ずかしがるところが、ホント可愛い。他の誰の前でも見せないそんな無防備なところが、すごく可愛くて……思わずキスしたくなる』

 凛子の両手首をとらえて、耳元でそんなことばかり言う明人が、意地悪に見えて仕方ない。思いきり泣きまくって目を腫らして、ハンカチやティッシュで拭きまくった後といっても、いままでで一番醜い顔をしているに違いないのにそんなことを言う明人は、サドの気があるのではないかと凛子は思う。

『い、や……いまの顔すごくひどいのっ だから見ないでえっ』

 思わず新たな涙を目尻にためながら訴える凛子に、明人の喉がごくりと鳴った気がした。まるで、獲物を前にした狼が舌なめずりをしたように、凛子には思えた。

『あーやばいな。そんな風に胸元全開でって俺がやったんだけど、可愛いとこばっかり見せられたら、せっかく寝た子がまた起きちゃいそうだ』

 焦りを隠すことなく言いながら、明人は天井を仰ぐ。それと同時に凛子の手首をつかんだ手も離れたので、凛子はあわてて胸元のボタンを留め直した。

『もう夜も遅いし、このままここにいたらまた襲っちゃいそうだし、俺は帰りますよ。やっぱりそういうことは、きちんと心が通じ合ってからするものだと思いますしね』

 つい先刻まで襲う気満々だったんだろうによくいうと凛子は思った。

『だから、その気になった時はいつでも言ってくださいね。何があろうとすぐ駆けつけて、貴女のすべてをいただきにまいりますから』

 言いながら、凛子の頬にそっとキス。

『もうっ そんなことばっかり言ってひとをからかって! 明日も仕事なんだから、早くお帰りなさいっ!!

 すっかりいつもの調子を取り戻して言うと、明人は「それでこそ凛子さん」と言って笑った。そのせいか、明人が帰った後も変に自己嫌悪に陥ることなく、至って普通に日課をこなして、ベッドへと入った。

 いつもなら、例の元彼氏を思い出すたびに見ていた悪夢もまったく見ることもなく────むしろ、柄にもなくドレスを着た自分を、白馬に乗った明人がさらっていくという由風が聞いたら抱腹絶倒間違いなしの夢を見てしまったが、幸か不幸か翌朝目覚めた凛子は内容をまったく覚えていなかったので、最悪の事態はまぬがれた訳だが────ぐっすりと眠ることができた。

 目元のケアをした後、いつものように支度を整え、いつものように電車に乗って、いつものように会社に向かい、いつものようにオフィスの窓を開ける。凛子の平和な朝は、そこで終わりを告げることになるのだが。

 ……まさか課長クラスにまで話が伝わるなんて、思ってもみなかったわ………誰よ、勝手に噂を流すバカは!?

 課長が誰から聞いたかまでは明かさなかったおかげで凛子は知らなかったが、噂の元は実は専務だったというのはここだけの話。

 とにかく、朝から思いきりペースを崩されたおかげで、その日の凛子の仕事はガタガタだった。いつも定時を目標に頑張っているのだが────別に用事の有無とかではなく、単なる目安としてである────この日ばかりはとてもではないが予定の三分の二ほどしか仕事が進まなかった。納期の余裕はあるが、本来なら今日中に終わらせるはずだったものを明日以降に回すなど、仕事に関してはプライドがエベレスト並の凛子に耐えられるものではなかった。どんどんノルマをこなして先に帰る後輩たちを見送って────時に下世話にからかってくる男性社員を叱りつけて────凛子はデスクに戻る。その結果、オフィスには西尾以外すっかり人がいなくなってしまったが、無遠慮に明人とのことで話しかけてくる人間がいなくなったほうが仕事がはかどるのは目に見えていたので、凛子はこの日初めて心からホッとしてため息をついた。営業の人間が何人かまだ戻ってきていないが、直帰の可能性が高いだろう。営業補佐とはいえ、営業担当とは微妙に仕事の種類が違うので、そちらのスケジュールまで把握していないのだ。

 やっと、何にも煩わされないで仕事ができるわ。まったく、みんなひとのことになるとうるさいんだから。

 本気で気合を入れて、サービス残業のつもりで一気に仕事を片付け始める。西尾も基本的には無駄口をたたかないタイプなので、静寂の中、完全に集中状態に入ると自分でも信じられないくらいの速度で仕事が進む。やはり仕事は自分の生き甲斐なのだなとしみじみと思いつつ、以前の自分だったらその事実ひとつで傷ついていただろうに、いまは穏やかな気分でいられるのは、やはり明人のおかげなのだろうなと思う。自分でも、驚きだけれども。

「さて…と。僕はそろそろ上がりますが、凛子さんのほうはどうですか?」

「私ももうじき終わるわ。どうぞお先に上がって」

「じゃあ、遠慮なくお先に上がらせていただきます。どうもお疲れ様でした」

「お疲れ様でした」

 笑顔であいさつをかわし、西尾が去っていく気配を背後で感じながら、ラストスパートをかける。保存するための動作を済ませ、あとはパソコンが作業を終了すれば後始末をして帰るだけだ。せいぜい二時間ほどの残業だったが、今日はいつもの倍疲れた気がする。

「西尾くんいま上がり? この間はほんとうに助かったよ、どうもありがとう」

「お帰りなさい、神崎さん。こちらこそ、なかなか面白いものを見せてもらったし、おあいこですよ。じゃ、お先に」

 背後から聞こえたその名に、凛子はぎくりと身をこわばらせる。直帰ではなかったのか!? というか、よりによって何故いま現れる!? こんな、他に誰もいないオフィスに!!

「おや」

 案の定、凛子の後ろ姿を認めたらしい明人の楽しそうな声が聞こえる。

「僕を待っててくれたんですか? 迷ったけど、直帰しないで大正解だったなあ」

「う、自惚れないでちょうだいっ 朝のあの騒ぎのせいでいつもの調子が出なくて、仕事が長引いちゃっただけなんだからっっ」

 冷たく言い放つけれど、明人はめげている様子はまるでない。

「それで、仕事は終わったんですか」

「ああ、いま保存してるこれが終わったら終わり…」

 答えてから、凛子はしまったと思った。現在の明人との関係からしてみたら、「どうぞ手を出してください」と言っているようなものではないか! その通り、気付いた途端に明人の唇が凛子の丸出しのうなじにそっと触れて。小さな音を立てて口づけられた。

「…っ!!

 多くの女性がそうである通り、凛子も首筋が弱い。それを狙っての行為ならなおさらだ。ぞくぞくする感覚を味わいながら、震える両手で明人の身体を押しのける。力の入らない腕では、まるで意味がなかったが。

「も、もう…っ オフィスでそういうことはやめてって言ってるのに」

「オフィスじゃなかったらいいんですか? 俺の家のベッドなら、セミダブルだからいつでも泊まれますよ?」

「そういう意味じゃないったら…! それに、他の誰と一緒に寝たかわからないベッドでなんて、嫌よ」

 そう言ってやれば、さすがの明人も凹むかと思ったのに、明人はけろりとして答える。

「うちのベッドは俺以外寝たことのないまっさらなベッドですよ。他の女性なんて、部屋にすら入れたこともありません」

 驚きつつ意外にストイックな女性関係だったのか?と一瞬思いかけるが、明人がこの春この部署にやってくるまでの経緯を思い出して、すぐにハッとする。

「こちらに引越す時に買い換えただけでしょうに、いまさら清純ぶらないでちょうだい」

 きっぱり言ってやると、明人はバレたかと言わんばかりの表情を浮かべ、ちらっと舌を出した。そのさまは、まるでささやかないたずらがバレた小中学生の少年のようだった。

 まあ自分だって、明人に出会うより以前には別の相手とつきあっていた過去があるのだから、文句を言う筋合いもないのだけど。そこまで考えて、凛子ははたと気付く。まだ自分が明人を好きと決まった訳でもないのに、何を考えているのだと。凛子自身の気持ちがどうでも、事態がここまで進んでしまっている以上────自分の家族や蘭子の結婚相手の家族、さらには会社の面子にまで交際を公表したも同然の現状で考えることでもないだろうにと、由風あたりが聞いたら鼻で笑いそうな思考であるが。

「それはともかく…あんまり綺麗なうなじだったんで、つい」

 反省していなさそうな明人に少々腹が立って、どうせ仕事ももう終わりだしと、凛子はひとつの妙案を行動に移した。

「え?」

 明人の目の前で、髪を束ねていたゴムとピンを、躊躇うことなく一気に取り払ってやる。そのとたん、それまで余裕をたたえていた明人の表情が、一変した。敏腕サラリーマンの眼光と自信たっぷりな表情から、何事にもいっぱいいっぱいで、自信などまったく持てないような内心が全身にあふれている新入社員のようなそれに。明人を知る他の者が見たら、とても信じられないであろうほど急激に、その変貌は起こった。軽く頭を振ってから手ぐしで髪を整えながら凛子がそちらを見ると、明人はまるで妙齢の女教師の前にひとり引っ張り出された男子中学生のように真っ赤な顔をして、何も言えずに凛子の顔すら直視できないでいる。

 思った通りだ。やっぱり明人は、素顔の凛子には何故か弱いのだ。理由までは、凛子自身にもわからないけれど。

「─────ねえ」

 下から上目遣いで────ちなみに凛子本人に他意はない。単に身長差の問題である────明人の顔を覗き込む。明人はちらりとこちらを見たが、すぐに目をそらして黙り込む。

「どうして、私が髪を下ろすとそんなに急激に態度が変わるの? 普段の私と、何がそんなに違うの?」

 仕事中のひっつめ髪の時と違い、髪を下ろすと自分がフェミニンな雰囲気を醸し出す、女性らしい女性になることを、幸か不幸か凛子は知らない。正確には、周囲が言ってもまったく信じていなかったので、覚えていないだけなのだが。そしてそんな自分が明人の好みどストライクだということも、昨夜本人からハッキリ聞いたにも関わらず、自分自身に余裕がなかったせいでよく覚えていない。

「そ、それは…」

「それは?」

 はたから見れば、純情な男性を誘惑する少々悪い女性に見えなくもないが、凛子自身にそんな意識はまったくない。彼女にしてみれば、純粋に質問しているだけだ。

「なあに? 私の目をちゃんと見て話して」

 両手で明人の両頬をつかみ、その顔を強引にみずからに向かせる。これにはさすがの明人もたまらなかったのか、充血し始めた両眼で凛子と目を合わせたかと思えば、いきなり凛子の手を振り払い、強引に凛子の身体を抱き寄せた。

「きゃあっ!?

 今度は凛子が驚く番だった。懸命に明人の両腕を振りほどこうとするが、明人も素顔の凛子と真正面から顔を合わせる勇気が出なかったのか、意地でも離そうとしない。

「ちゃんと話してくれなきゃわからないわ。どうして、髪形ひとつでこんなに態度が変わるの?」

 なおも問いかけるが、答えは返らない。代わりに、先ほどまでとは比べ物にならないほどの動悸が、明人の胸から伝わってくるだけだ。

「どうしてこんなにも動悸まで違ってしまうの?」

 明人の胸に手のひらを当てて、やはり他意もなく訊く。その途端、明人の片眉がぴくりと反応したような気がしたが、強く抱き締められていて身じろぎひとつままならない状態なので、完全には確認できなかった。

「ああもうっ」

 イラつきも最高潮に達したかのような声の後、首筋の髪を少々乱暴に払いのけられて、うなじに唇を這わされ、そのまま強く吸いつかれた気がした。痛みというほどでもない感覚が首筋を中心に全身を走り、凛子の身体を固まらせる。

「な…何をしたの!?

 ようやく解放されて、思わずうなじに手をやるが、手で触った感触はまるで変わらないままなので、凛子自身には何が起こったのかよくわからない。

「何って…目には目を、意地悪には意地悪を、ですよ」

 思いっきり意地の悪そうな笑顔で明人は答える。そんな顔をすると、まるでドラマの悪役そのもののようで、普段の優しい仮面に騙されている女性の何割かは幻滅するのではなかろうかと凛子には思えた。まあ、残りの何割かはかえって惚れ直すだろうが、生真面目な凛子はそんなことには気付けない。制服のスカートのポケットからコンパクトを取り出して、急いで給湯室に向かう。給湯室の壁に掛けられている小さな鏡と合わせ鏡にでもしなければ、見えない位置そのものだったからだ。一分後、凛子の怒りの叫びが轟いた。

「ひ…ひどいわ、こんなところにこんなものをつけられたら、しばらく髪が上げられないじゃないっ!!

 こんなもの─────言わずと知れた、いわゆるキスマークのことだ。憤怒の形相の凛子とは対照的に、明人は涼しい顔だ。

「いいじゃないですか、堂々と上げれば。僕のものといういい牽制になりますしね。何だったら、前のほうにもいくつかつけておいて差し上げましょうか?」

「そんなことできる訳ないでしょ、大体貴方というひとは、どうしていつもそう強引に…!」

 凛子が明人の胸ぐらをつかんだ瞬間、パンパンパン…!と大きな手ばたきの音が聞こえてきた。

「はいはい、痴話ゲンカはそこまでにしといてちょうだいよー」

 こちらもてっきり直帰かと思われていた、由風だった。

「由風? 今日は直帰じゃなかったの?」

「そのつもりだったんだけど、明日の朝直行してから出社しようと思ってたとこの資料忘れちゃってさ。取りに戻ったらコレだよ、あーあっついあっつい」

 まだ初夏としか呼べる季節でしかないというのに、由風はわざとらしく手で顔を仰いでみせる。

「べ、別に痴話ゲンカなんかじゃ…っ」

 明人から手を離し、凛子はぷいっと横を向いてみせる。それと同時に、由風が凛子の後ろ髪をそっと持ち上げて、そのうなじを食い入るように見つめてきた。

「あーらら、また見事につけられちゃってえ。こりゃ当分消えないよ〜? バンソーコー貼ったところで、わかっちゃうだろうねえ」

「そ、そんなにひどい!?

「も、すっげーわ。そんなん丸出しにしたら、まず間違いなくセクハラ親父どものいい餌食だろうね」

 きしししし…と、どっちがオヤジだかわからない笑顔で由風は笑った。

 冗談ではない、と凛子は思う。明人とはいまだそんな関係────まあキスぐらいはしてしまったが────になっていないというのに、そんな噂まで立てられたら自分はもう会社に来られないではないか。

「どうしてくれるのよ……あたしの完璧なワーキングライフが台無しだわ」

 絶望を隠すことなく、凛子はその場でへたり込む。もう、脚に力が入らない。

「だから、僕が責任をとりますってば。既にそちらのご家族にも挨拶してるんだし、何も障害はないじゃないですか。うちの両親ものんきな部類に入るほうだし、妹も凛子さんと似たバリバリのキャリアウーマンだし、絶対うまくつきあっていけると思いますよ。僕も共働きに何の抵抗もありませんしね」

 気楽なことを言い募る明人をキッとにらみつけてから、凛子はすっくと立ち上がる。心の奥底から湧き上がってきた怒りのせいで、全身に力がみなぎってきたのだ。

「由風、ちょっと待ってて。あたしもいますぐ帰る支度するから、一緒に帰りましょ」

 明人に目もくれず、由風に向かって一気に言いきる。

「えっ 僕と帰るんじゃないんですか?」

「あたしこれから女子更衣室に行って着替えるから。ついてきたら、遠慮なく悲鳴上げるわよ。警備員に連行されたくなかったら、ひとりでさっさと帰って!」

 キツ過ぎるほどにキツい口調で告げてから、凛子はさっさと帰り支度を始める。明人は茫然としたままそれを見つめ、由風は完全に呆れ顔だ。怒りの足音を隠すこともなく響かせて女子更衣室に飛び込んで着替えて戻ってきてから、明人からはぷいと顔をそむけたまま、由風の腕をとって「お待たせ、行きましょ」と言って歩き始める。

「じゃあお先にっ あとの戸締りはよろしくねっ!」

 言うだけ言って、由風と共にオフィスを去ってしまった。後には、がっくりとうなだれる明人だけが取り残される……。



    






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2012.12.29up

せっかく凛子との距離が縮まったのに
調子に乗り過ぎて怒らせてしまったようです。まさに馬鹿んざき(笑)
凛子のお怒りは解けるのか?

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