五月病のニュースも一段落した頃。早朝のごった返す通勤ラッシュの中、鈴木凛子(すずきりんこ)はいつものようにヒールの音も高らかに自社ビルへと入っていく。
「おはようございます」
「おはようございまーす」
「おはよう」
挨拶を交わしながら、既に眼をつぶってでもたどり着ける自分のロッカーのドアを開け、身支度を始める。制服を隙なく着こなし、胸に届くほどのパーマのかかった髪も前髪まできっちりと結い上げ、眼鏡をかけ直す。大学卒業後の入社以来、完全に習慣と化した身支度だ。
「お先に」
短く告げて、ロッカー室を後にする。
「相変わらずばばくさいカッコねー」
「あんなんだから三十路過ぎて独身なのよ」
背後からクスクス笑いを含んだ声が聞こえてくるが、凛子は気にしない。
会社は仕事をするところであって、色気を振りまくところではない。これが凛子の戦闘態勢といえるスタイルなのだ、他人にどう思われようと構いはしない。凛子にとって仕事で結果を出すことが最優先事項なのだ、他のことなど後回しだ。
オフィスに入るとまず窓を開け、空気の入れ替えをしながら給湯室へと直行。電気ポットの中の水を入れ替え、コンセントを差してから雑巾を引っ張り出す。自分の所属する営業課全員分の机を拭いてから、窓を閉めてファックスをチェック。宛先別に分けたところで、いつものように賑やかな声が近付いてくる。
「おはようございまーすっ!」
まだ二十代の後輩女子たちだ。素直ないい子たちではあるのだが、若さゆえか生来の気質か姦し過ぎるところがあって、そのへんだけは凛子にはついていけないところであったりする。
「おはよう。さっそくだけど、これを該当者のところに持って行ってね」
「はーい」
ファックス用紙を渡してから、自分のデスクに戻り、パソコンの電源を入れて立ち上がるまでの間に他の準備を整える。今日は締め日ということもあり、いつもより忙しいのだ。時間を無駄にしている余裕はない。
「おはよー、凛子っちゃーんっ H社さんの見積もりって、できてるー?」
背後から突然抱きついてくる存在にまったく動じることもせず、凛子は手元の書類をひら…と示してみせる。
「はい、おはよう。昨日のうちに出しておいたわよ。朝一で行ってくるんでしょう?」
振り返りもせずに告げると、パンツスーツ姿のショートヘアの女性が、驚いたように目を見開いた。
「すごーい、あたし『お願い』としか言わなかったのに、よくわかったわねえ」
「あんたと何年付き合っていると思っているのよ、由風(ゆうか)。どこよりも早く行って契約ゲットするつもりなんでしょ」
そう返すと、入社以来の親友である営業の佐藤由風は、満面の笑みを浮かべてみせた。
「そのとーりっ さすが親友、わかってらっしゃる!」
ノリは軽いが、由風はこれで営業課の一、二を争うほどのやり手なのだ、この外面に騙されてなめてかかって痛い目を見た男を、凛子は何人も知っている。
「最近来たばっかのルーキーになんか負けてられないからね」
由風の言う相手が、言葉通りの新人でないことも、凛子はよく知っている。だからこそ、たしなめの言葉を口にした。
「ルーキーなんて、失礼でしょ。確かにこちらに来たのは最近だけど、彼はいままでいた支社で常にトップを走り続けてきたエリートなのよ?」
「よそでどうだろうが、ここではあたしのほうがダントツ先輩よっ そう簡単にトップの座を明け渡してなるものか!」
ファイティングポーズをつくりながら吠える由風に、凛子は苦笑いを浮かべるしかない。まあ、この負けず嫌いの気性こそが、由風の由風たる所以だということもよく知っているからだ。
「それでこそ、目標として追いかけ甲斐があるというものですよ」
突如割って入った声に、ファイティングポーズもそのままに、由風が素早く振り返った。その様子は、さながら毛を逆なでた猫のようである。
「出たな、神崎」
「神崎『くん』でしょ」
凛子のたしなめるような声も由風の耳には届いていないらしい。目前に立つ男性をほんの一秒ほどキッと睨みつけた後、凛子から受け取った書類を手早くバッグにしまい込み、由風は背筋をピンと伸ばしてまっすぐ前を見据える。
「絶対負けないからね」
挑発的に相手に言い放ってから、くるりと凛子に向き直り、今度は笑みを浮かべて告げる。
「ほんじゃ、行ってくるわ。絶対契約とってくるから、その後はよろしくね」
「行ってらっしゃい。楽しみにして待ってるわ」
答えると同時に、由風は目前の相手とすれ違ってオフィスから出て行った。後には、椅子に腰を下ろしたままため息をつく凛子と、にこやかに笑顔を浮かべたままの眼鏡をかけた男性が残される。
「……いつもいつもごめんなさいね。由風ってば、ホント負けず嫌いなんだから。もう三十も過ぎてるんだから、もう少し落ち着けばいいのに」
同い年だが、つい由風の姉のような気分になってしまう凛子は、すぐそばに立つ同僚の神崎明人(かんざきあきひと)に詫びの言葉を告げてしまう。
「気にしてませんよ。あれくらいでなきゃ、トップの営業は務まりませんから」
本心からの言葉としか思えない笑顔で、神崎は告げる。事実他県のトップを十年も突っ走ってきた彼だからこそ、わかることもあるのだろう。
彼の本来の出身地は紛れもなくこの地だが、何の因果か入社直後に他県の支社に配属されて以来、みずからの境遇を呪う訳でもなく、なおかつ逆境をばねにしてのし上がってきた男だ。だからこそ、地元であるこちらの支社に異動願いを出してこの春円滑に転勤してこられたのだろう。そんな彼を、尊敬こそすれ由風のように敵愾心を燃やす気など凛子には毛頭ない。まあこれは、営業と営業補佐という立場の違いからかも知れないが。
「ところで凛子さん、話は全然違いますけど……朝からさっそくで申し訳ないんですが、М社さんの売上計上をお願いできますか。アポの都合上、明日の一番最初に提出しなければならないようなんです」
「了解しました。どっちにしても今日とりかかるつもりだったけど、それなら一番に仕上げときます。午後一にはできてると思うわ」
頭の中で優先順位を考えながら答えると、穏やかな神崎の笑顔が瞳に飛び込んできた。
「どうかした?」
年齢もほぼ一緒という気安さから、ついくだけた語り口になる。
蛇足ではあるが、神崎氏が彼女を名字でなく下の名前で呼ぶことに深い意味はない。これは由風にもいえることだが、ふたりの名字である「佐藤」と「鈴木」の姓を持つ者が社内に溢れ返っていて紛らわしいという、ただそれだけの理由からだ。
「いえ。さすが凛子さん、頼りになるなと思って。急がせてもミスは絶対にしないから、こちらとしてもとても安心して任せられます」
「褒めても何にも出ないわよ」
「本心なのになあ」
「はいはい、わかったからお仕事に戻って戻って」
手をひらひらとさせて神崎を席へ追いやってから、さてと呟きながら凛子は席に着き直し、目前のパソコンに向かいかけた…が。背後から奇妙な気配を複数感じ、振り返りもしないでその名を口にする。
「……愛理・紗雪・麻美香。言いたいことがあるならさっさとおっしゃい」
淡々と告げると、途端に背後で深いため息。
「やっぱりすごいですう、凛子さんは」
「神崎さんって、人あたりは穏やかだけど、あんなに人を褒めたりすることって滅多にないんですよ?」
「しかもあんな極上の笑顔付きで〜。神崎さんてもてるのに、どんな子に告られても全然なびかないって評判なのに」
天然の愛理、由風と同様体育会系の紗雪、恋愛体質の麻美香が口々に感想を口にする。らしいといえばらしい感想だが、凛子にとっては興味ない事柄そのものに相違ない。
「あー、もうっ 仕事に関係ないことは休憩時間に話しなさいっ そんなに認めてほしければ、まず努力して結果を出すことね。はい解散!」
手をパン!と叩いて促すと、三人娘は蜘蛛の子を散らすようにそれぞれのデスクに散って行った。
まったくいまの若い子は。そういうことばっかり考えてるんだから。努力して自分を高めれば、結果なんて後からついてくるっていうのに。
「相変わらず賑やかな人たちですね」
隣のデスクにいた青年が、クスクス笑いをにじませながら声をかけてくる。凛子の三年後輩の、西尾一馬だ。穏やかな外見で、細やかな気配りのできる、現代風に言うならば草食系とでも評するのであろうか。
「あの子たちも、やればできる子たちなのに他のことにばかり気をとられるから……で、どうしたの? 西尾くん」
「あ、質問なんですが。K社さんのこの新製品なんですが、特例の価格でやるという話は、いつまでのことなんでしょうか」
「ああ、これは……」
いつものオフィス、いつもの光景。これが、凛子の日常であった。
凛子にとっては、とくに不満のない毎日……なのだが。周囲の人間は、そうは思っていないようであった。
その日の終業後。軽い残業を終えて、ロッカー室で着替えを終えた凛子は、眼鏡をかけ直そうとしてふとその手を止める。たまにあることだが、仕事柄パソコン画面を一日中見ていることも多いので、時々無性に目が疲れてたまらなくなるのだ。後は慣れた帰路につくだけだし、細かい字を見
たりするのは駅で電光掲示板や電車の行き先を確認するぐらいだろう。近視といってもそれほど視力も悪い訳ではないし、眼鏡がなくても大丈夫だろうと判断し ────とりあえずまだ明るいし、会社から一人暮らしをしている部屋までの治安も悪くないこともあって、眼鏡を外したまま帰ることにして、眼鏡をそっといつも持参しているケースの中にしまってバッグに入れる。
だから、まるで気付かなかった。きっちりまとめていた髪を下ろし、会社を出て駅に向かって歩いていたところで、驚いたような顔をして自分を見つめている男性がいたことに。その時、眼鏡をかけているなりたまに使用するコンタクトレンズを入れていれば、その相手の正体にすぐ気付いたであろうことに、凛子はこの時まったく気付いていなかった…………。
駅の手前、大きな百貨店の前で、鳴り出した携帯に気付き、凛子はバッグから取り出しながら他人の通行の邪魔にならない所にそっと身を寄せた。着信相手を見ると、隣の市にある実家からだ。おそらく母親からだろう。
「はい、凛子です」
耳に届くのは、案の定聞き慣れた高い声。
『凛子? さっきも電話したのよ、気付かなかったの?』
「あ、ごめん。ちょっと残業してたから、いま帰りなのよ」
『相変わらず仕事三昧なの? デートする相手もいないの、あんたって子は』
あ、マズい。いきなり面倒くさい流れだ。
「いまは仕事が楽しくてね。恋人なんて、まだ考えられないわ」
『またそんなこと言って……あたしがあんたの年の頃には、もうあんたとお兄ちゃんを生み終わって、子育てに追われてた頃よ!』
ああまた始まった。凛子が二十代後半に突入した頃から、母親のこういう愚痴が多くなった。いまは昔といろいろ違うんだからといっても、聞き入れやしないのだ。次の台詞は決まっている。早いところ孫の顔を見せろというのだろう。
それならば、二歳年上の兄が既に結婚して子どもも生まれているのだから、そちらを可愛がればよいではないかといつもの反論を口にする準備を整えたところで、凛子の耳に予想もしなかった言葉が飛び込んできたのは、次の瞬間のこと。
『ああそれでね、今年の秋の話なんだけど、蘭子の結婚が決まったのよ。で近いうちの大安吉日に顔合わせやら結納やらやることになったから、都合つけて帰ってらっしゃい』
蘭子、とは凛子と七歳離れている末の妹の名だ。短大卒業後、資格をとって保育士として保育園で働いていたはずで……姉の自分がいうのも何だが、少女の頃からその名の通り花のように愛らしい自慢の妹だった。
『相手の方は、保育園でお預かりしているお子さんの保護者さんのお兄さんで、顔はちょっと怖いけど、これがなかなかの好青年で……ちょっと、聞いてるの!?』
母親の声も、半ば耳に入らない。
……あー。目の前が暗くなるって、こういうことをいうのかしら…………。
* * *
「…珍しくあんたから飲みに行こうなんて言うから、どうしたかと思えば」
翌日の晩。いつもの居酒屋で向かい側に座ってジョッキを傾けるのは、由風。凛子はいえば、日本酒をちびりちびりとやりながら、テーブルの上で突っ伏している。仕事の時以外は下ろしている髪の毛先が、ふわりと力なくテーブルについているが、そんな ことを気にしている余裕などない。
「妹に先越されたのがそんなにショックだった訳?」
「そんなんじゃないわよーう。私が手塩にかけて守ってきた可愛い妹が、ついによその男のものになっちゃうのかと思ったら、さ。何かやりきれなくってさー」
ほんとうに、可愛い妹だったのだ。前述の通り、容姿もさることながら、性格も格段に可愛いのだ、あの妹は。蘭子が就職してからは、生活パターンが違ってしまったこともあり、あまり会ったり電話したりしていなかったけれど……小さい頃から「お姉ちゃん、お姉ちゃん」とついて回り、何でも凛子の真似をして、凛子が大学入学時に実家を出た時には泣いて嫌がったほど、一途に慕ってくれた……可愛い妹なのだ。
「それを、どこの馬の骨だかわかんない男に持ってかれる気持ち、あんたにわかる!?」
「わかんないわよ、あたしにゃ可愛くない弟しかいないんだから」
そこまで言ってから、由風はふと思い出したように口を開く。
「そういえば、あんたにゃ既に結婚してる兄貴もいたんじゃなかった? 確か…『蓮』さんて言ったっけか」
「兄貴〜? あんなのはどうでもいいのよ、どこの女にでもとっとと持ってってくれって言いたいぐらい。まあ、えらくできた兄嫁さん連れてきたから、その点だけは褒めてやりたいけどさ。あの兄貴の子とは思えないほど、甥も姪も可愛いのよ、ホント」
「すっげー扱いの差でないの」
まあ男きょうだいに関しては気持ちはわかるけどさ、と由風は笑う。
「あたしがもし他人の男だったら、他の誰にもあの子を渡さなかったってのにさ」
「こーのシスコン」
「自覚はあるわよーだ」
職場では絶対にたたかないような軽口も、由風の前では素直にたたける。親友というものはありがたいなあと、凛子はしみじみと思う。
ほんとうに。ほんとうに、可愛い妹だったのだ。いつかは誰かのものになってしまうとわかってはいたけれど、こんなに早くにだとは夢にも思っていなかった。いままで凛子がいた位置には、既に他の誰かがおさまっている。そしてこの先には子どもも生まれるだろうし、凛子のいたはずの場所はどんどん狭まっていくのだろう。
「まあまあ。あたしはいつまでもあんたのそばにいるからさ。あたしで我慢しときなって」
「はいはい。愛してますよー、由風さまさま」
由風もいつかは、自分とは別の大事な相手をつくってしまうのかも知れないけど。いまはただ、由風の気持ちがありがたかった。
「もしもこのまま二人とも独身だったらさ。一緒に住もうかー」
「いいねえ、女二人、誰にも邪魔されない気楽なマイホームってか」
すっかり酔っ払ってしまった妙齢の女二人が、けらけらと笑う。この直後の自分たちの運命が、どんな風に激変していくかも知らずに。
二人はまだ、何も知らない…………。
「りーんこっ ほれ、しっかりしなよー」
「しっかりしてますよ〜、ほらあ」
こんなにちゃんと歩いているのに、由風は何を言っているのだろうと、凛子は思う。実際には、由風の言う通り、まったくまともに歩けていないのだが。
「まいったなあ、いくらあたしでも家まで抱えていけないぞお〜?」
由風の呟きも、凛子の耳には入らない。
「あっ 天の助け発見!!」
「え? 由風さん!? こんなとこで何やってるんですか」
「何って、酔っ払いの介抱よーん」
「どう見ても酔っ払い二人組にしか見えませんが」
「うーるさいな、あんたはっ こんなにしっかりしているあたしのどこが酔っ払いだってのよー」
「まあまあ、落ち着いて。…そちらの方はお友達ですか?」
聞き覚えがあるような気はするのだが、普段の声とはどこか違う響きを宿しているので、酔っていることもありその人物の正体には思い至らない。
「何言ってんのよ、あんたもよく知ってる凛子じゃん。あんたも酔っ払ってんのー?」
「凛子さんって……えええっ!?」
「あ、ちょうどいいやあ、あんた凛子送ってってやってよ。家はW町のほうだからさあ」
由風に寄りかかりながらずっと俯いていたから、自分の頭上で誰が会話をしているのか凛子は知らない。また、確認しようと思うだけの余裕もこの時の凛子にはまったく生まれなかった。だから、由風の腕から誰かの力強い腕に引き渡された時も、目を開けることもせずにされるがままになっていた。
「凛子さん? 大丈夫ですか?」
面と向かって声をかけられてから、凛子はようやくゆっくりと目を開けた。目の前にあるのは、眼鏡をかけた男の顔。声同様、見覚えはやはりあるのだけど、誰だったかがまったく思い出せない。
誰だったっけ、この人…知ってる人のはずなんだけどなー。全然思い出せないわ。まいっか。支えてくれてるこの腕が、楽でたまんないから。
「だーいじょーぶよーん、あははははは」
何だか楽しくて仕方がない。
「こ、これは大丈夫ではないようですね」
「だーいじょうぶだってば、何いってんのよー」
こんなに大丈夫だと訴えているのに、何故こんなにも信用されないのだろう?
「じゃあ、僕が誰かわかりますか?」
予想もしなかった質問が投げかけられたのは、次の瞬間のこと。凛子は即座に答えようとした…のだけれど。どうしてだか、目前の男性の名前が思い出せない。それどころか、自分と面識があることはわかっているのに、どういう間柄の相手だったかさえも思い出せない。
「……誰だっけ? あなたの名前何ていうんだったっけー、やだ出てこないわどうしましょ、うふふふふふふー」
思い出せない事実自体が面白くてたまらなくて、もう笑いが止まらない。
「わかりました、送っていきますよ…って、由風さんどこ行くんです!?」
慌てたような、相手の声。
「どこって飲み直しに行くんじゃーん。付き合ってよねー」
うっすらと目を開けると、由風は凛子を支えている相手とは違う男性の腕をしっかりと掴んで、夜の街に消えていこうとしている。その相手の顔も見覚えがあるのだが、やっぱり思い出せない。
「由風さん、ちょっと!」
「凛子のことよろしくねーん♪」
その言葉を最後に、由風と男性の姿は金曜の夜の雑踏の中に消えていった。凛子を支えている男性も懸命に追おうとするが、凛子が文字通りお荷物になっていてそれ以上進めないようであった。後には、へろへろになった凛子と当惑を隠しもしない表情を浮かべた男だけが取り残される。
「うっそ、だろ〜……」
それこそ頭を抱え込みかねない勢いで男が呟くが、凛子を支えなければならないので体勢は変わらない。
そんな男の呟きをかき消すように、週末の夜の喧騒はまだまだ続くのであった………………。
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