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──────人と人の間には色々な距離がある。物理的なものから、関係、立場、性別、年齢、血のつながり、友情、好意、それから…恋愛感情の有無…………。




 春。今年大学を卒業したばかりの小林唯(こばやしゆい)は、これから自分の職場となるC株式会社の総務部で、研修後同じく総務部に配属になった他の新入社員と共に、カチンカチンに緊張しながら直立不動のまま立っていた。自分たちの前に先輩社員たちを集めて、朗々と話しているのは、これから自分たちの上司となる部長。自分の父親といってもおかしくないほどの、壮年の男性だ。

 緊張のあまり、皆が自分ばかりに注目している気がするが、これは唯の自意識過剰とも言い切れない。何故なら唯は、百七十三センチという女性にしては長身の持ち主で、同じ新入社員の女子の中では頭一つ分抜きんでていて、男子とそれほど変わらない身長だったから。社外に出る必要のない女子社員は、就業中は制服を着るのがこの会社の規則だったが、唯の着られるサイズがなかなか見つからなくて、結局事前に改めて注文することになったと聞いて、思わずため息をついてしまった。全体的には決して太ってはおらず、「モデルにならないか」と声をかけられたこともあるほど顔立ちもそこそこ可愛いのだが、この長身がコンプレックスになっていて、唯の自己評価はとことん低い。

 部長に促されて、順番に沿って簡単な自己紹介をしながら頭を下げる。胸に届くほどに伸ばしたまっすぐな黒髪は、いまは後ろできっちりと結んで地味な色のシュシュでまとめているから、身体の動きに合わせて毛先がさらりと前に流れてくるだけだ。根が生真面目な唯には、同じ大学を卒業した学友たちのように、困難な就活を経てようやく就職できたからといって華やかな化粧や装いをする気にもなれず、どうしても型通りのスタイルになってしまうのだ。

「では、次は先輩にあたる彼らに簡単に自己紹介をしてもらおうか」

 部長の声に従い、先輩たちが順番に名乗っていくのを真剣に見つめながら、唯は懸命にその名前と顔を頭の中にインプットしていく。とにかくいまは、先輩や上司の顔と名前を覚えることが最優先事項だ。でなければ、挨拶や会話、仕事についての質問をするにしても話にならない。ひとりひとり、一生懸命顔を覚えようとしていた唯の視線が、次に自己紹介をしようとしていた一人の男性のところで止まる。

 あ、ら…? この人、どこかで見たような…?

 緊張でいっぱいいっぱいになっていたので、頭の中の引き出しからうまく記憶が引き出されてくれない。確かに見覚えがある気がするのだが……。

「大槻一哉(おおつきいちや)といいます。勤続四年目でまだまだ若輩ですが、わからないことがあったら何でも訊いてください」

 その名前と唯より高い身長────恐らく、百八十五センチはあるだろう────で、唯の記憶の一部が刺激されて、思わず小さな驚きの声を上げてしまった。

「小林くん? どうかしたのかね?」

 目ざとく気付いた部長に、「何でもありません」と答えてから、唯は懸命に平静を保つ。よもやまさか、こんなところで再会しようとは思わなかったのだ。彼の自己紹介は終わり、既に隣に並んでいた女性へと移っている。

「鳴海藤子(なるみふじこ)です。同じく勤続四年目で、大槻の同期です」

 どこぞのアニメのナイスバディの美女と同じ名前を持つという彼女は、そのキャラクターに負けないぐらいの見事なプロポーションと美貌の持ち主だったので、男子からは感嘆と驚愕、女子からは羨望と嫉妬の声が上がるが、唯はそれほど感銘を受けなかった。見た目がどうだからといって、本人が内心でそれを喜んでいるのかはわからないからだ。自分自身の経験から、そのことをよく知っている唯は、他人を外見で判断しないようにしようと固く誓っていた。

 やがて、部長の指示の元、新入社員は一人ずつ先輩社員に引き合わされ、指導をあおぐことになった。唯を指導してくれることになったのは、先刻皆の注目を集めた鳴海藤子。女性らしく、高過ぎず低過ぎない身長で、唯よりは低いが均整のとれたプロポーションで、女性からしたら憧れずにはいられないであろうほど、外見も所作も優雅でどことなく色気を感じる女性だった。

「席は、私の隣を空けておいたから。わからないことがあったら、遠慮なく訊いてちょうだい。新人なんだから、わからないことがあって当たり前なの。だから、自分ひとりで何とかしようと思わないで、どんどん頼ってちょうだいね」

 藤子は見た目通り、姐御肌な性格の女性らしく、思わず頼りたくなるような包容力にあふれていた。そのことに安心して、唯は笑顔で返事をしながら、さっそく疑問に思ったことを質問してみる────もちろん、仕事に関することだ。

 すると藤子は、予想外のことを訊かれたとでも言いたげに、魅力的な大きな瞳を更に丸くして、唯を見つめ返してきた。何か、マズいことを訊いてしまったのだろうかと思った唯は、その直後、藤子から逆に質問された言葉に今度は自分が目を丸くする。

「……私の見た目とかプライベートについては訊かないの? たいていの人は、まずスリーサイズとか彼氏の有無を訊いてくるのに」

「え、だって、そんなことはとりあえず仕事には関係ないじゃないですか。訊きたければ、休み時間にでも訊けばいいことですし。それに、ご本人の内面も全然知らないし、もしご本人がそういうことを訊かれたくない人だったりしたら、失礼にあたると思って……」

 そこまで言いかけた唯は、突然抱きつかれて、思わず小さく悲鳴を上げてしまった。抱きついてきたのは、もちろん目前に立っていた藤子だ。

「やあん、このコ可愛いーっ!! あたし、貴女気に入っちゃったー、ね、『唯ちゃん』って呼んでいい? あたしのことも、『藤子』って呼んでくれて構わないからっっ」

「あ、あのっ 先輩、は、はな…っ」

 「放してくれ」と言いたいが、うまく言葉が出てこない。同じ女性とはいえ、豊満な胸が自分の身体にぴったり当たって、パニックに陥ってしまったのだ。

「鳴海さん、鳴海さん。小林さんがびっくりしちゃってるじゃないか、とりあえず放してあげたら?」

 苦笑しながら助け船を出してくれたのは、先刻唯が顔を見て驚いた、大槻一哉だった。その言葉にハッとして、藤子はようやく唯を解放してくれた。

「ごめんなさいねー。あんまり嬉しかったんで、つい抱きついちゃったあ」

 てへっと笑う藤子は、それまでとは全然違ってとても愛らしくて、年上だというのに半ば無意識に「可愛い」と思わずにはおれなかった。

「いえ…ちょっとびっくりしただけですし」

「じゃあ、『唯ちゃん』って呼んでもいい?」

「はい。私弟と妹しかいないので、お姉さんができたみたいで嬉しいです。…『藤子先輩』とお呼びしてもいいですか…?」

 それは、ほんとう。この身長と家庭環境もあいまって、いつでも頼られるほうだったから、素直に誰かに甘えたことがあまりなくて寂しかったのだ。

「もっちろんよ、何なら『藤子お姉ちゃん』って呼んでもいいのよ?」

「そ、それはさすがに…」

 思わず苦笑してしまうが、この藤子という人は何だかにくめなくて、いつもなら二の足を踏んでしまうことだけれど、素直に「甘えたい」と思える。

「で、先輩、先ほどの質問なんですけど……」

「あ、そうだったわね、これはねー…」

 すっかり打ち解けた唯と藤子に、驚いたように注目していた皆もようやく自分たちの作業に戻る。ただひとり、一哉だけがホッとしたような笑顔を浮かべたことに、誰一人気付かないまま…………。


 それから。唯と藤子は、日に日に仲良くなっていった。

 藤子についてわかったこと。見た目はこんなにもフェロモンばりばりの美人でナイスバディなのに、異性関係についてはとても一途で、学生時代からつきあっている彼氏一筋で、毎朝彼氏の分もお弁当を作って渡してから出社してくるということ。見た目のせいで軽い女と思われて、さんざんセクハラや痴漢に遭うけれど、そういうことをするような男が大嫌いだということ。よく男性にお誘いをかけられたりもするが、いつもうまくかわして、絶対に応じたことがないこと。

 知れば知るほど意外だと思うが、藤子が内心でとても気にしているようだし、自分の経験からしても見た目で判断されて勝手なレッテルを張られるのがどれだけ嫌なことかわかっているので、唯は絶対にそういう言葉を口にはしなかった。

「でも…羨ましいな。先輩みたいな一途な恋って、すごく憧れます」

 唯も自作のお弁当をつつきながら、素直な感想を口にする。

「唯ちゃん、彼氏は?」

「それが…私、この身長でしょう? その時点で既にひかれちゃって、男の子なんてろくに寄ってこなかったんですよ」

 そう答えると、藤子はとたんに憤慨してみせた。

「何それ。唯ちゃん、こんなにいいコなのにっ 世の中の男は、見る目なさ過ぎよっ!」

 昼休みの社員食堂の片隅で、唐突に立ち上がって箸を握り締めて力説する藤子に、唯は慌てふためいてしまう。

「せ、先輩、落ち着いてくださいっ」

 ようやく皆の注目を集めていることに気付いたのか、藤子は「ほほほ」とごまかすように笑いながら、そっと腰を下ろす。それから、極端に声のトーンを落として。

「じゃあ、いままで彼氏とかは…?」

「お恥ずかしながら、ほとんど……身長もですけど、私みたいなタイプは息が詰まるって言われちゃって…」

 それもほんとう。昔から生真面目な性格だったのが災いしてか、女子にはよく頼られたり慕われたりするが、どうも男子には敬遠されがちなのだ。

「腹立つわねー。ほんと、男どもは見る目がないったら」

 そこで藤子は、ふと思い出したように口を開いた。

「……そういえば。訊き忘れてたけど、大槻とは知り合いだったの?」

 唯より高い身長つながりと、最初の顔合わせの時の唯の反応とで思い出したのだろう。

「あ、大槻…先輩は、実は高校時代からの親友のお兄さんなんです。だから、何度か面識があって……」

「へえー。でもあいつって、確か双子よね? もう一人のほうじゃなくて、あいつで間違いないの?」

「あ、それは間違いないです。事情があって、三年の時にその親友のコと一緒に学校帰りによく車で送ってもらったんですけど、先輩は大学生で時間があったけど、もう一人のお兄さんはおうちのお店で働いていて、そんな暇ありませんでしたから」

 そう言って、唯はずいぶんと前になってしまった高校時代に思いを馳せる。あれから…もう五年は経ってしまったのか。

 そうして、唯の心は懐かしい日々へと、一瞬にして引き戻されるのであった…………。




            *     *      *




「唯っ いま大変な時期なのは、すっごくわかってるの。だけど、助けると思って手伝って!!

 高校三年生の春。自分の席の前で、拝み倒さんばかりに手を合わせて頭を下げる親友に、唯は目を丸くする。

「ちょ…ちょっと真央(まお)。いったいどうしたっていうのよ?」

 驚いた顔のまま唯が問いかけると、真央はようやく顔を上げて。複雑そうな顔を見せた。

「…うちの部さ。もうじき最後の大会だからって、三年生が気合い入れまくって練習してるって言ったでしょ?」

 真央の言う「うちの部」とは、真央が一年の頃からマネージャーをしているサッカー部のことだろう。中学時代からの同級生に頼まれて、引き受けたと聞いている。

「うん。それがどうかしたの?」

「それに伴って、あたしたちマネージャーも忙しいんだけど、野村の馬鹿がさー」

 野村、とは真央をサッカー部に引き込んだ張本人で、現在はサッカー部のキャプテンだったはずだ。背も高く、顔もなかなかのイケメンなので、女子にモテていると聞いたことがある。真央に言わせれば、「中身はまるっきり小学生のサッカー馬鹿」だそうだが。

「野村くんがどうしたの?」

「こないだ入った一年のマネージャーが、奴に告ったらしいんだけどさ。奴ときたら、情け容赦ない言葉で、めっちゃ辛辣にフッたらしいのよね。『サッカーじゃなくて男にしか興味がないんなら、辞めちまえ』とか何とか」

「えーっ!?

 確かに野村なら言いそうな言葉ではあるが…。

「それでそのコは大泣きして辞めちゃうし、他の野村目当てのコたちもしらけちゃったらしくて、みんなこぞって辞めちゃって……」

 確か今年は珍しく多い人数が入ったと、真央が喜んでいたと思ったが…マネージャーは一見華やかに見えるが、実は結構重労働なので、軽い気持ちで入ったコはついていけずにすぐ辞めてしまうらしい。現に、真央と同時期に入った同級生も一学年下の後輩もどんどん辞めてしまって、今年の一年生たちが入学するまでは真央ともう一人の後輩しか残っていないと聞いていた。

「で、いまはあたしと二年のもう一人と、一年の二人ぐらいしか残ってなくてさ……」

「あらら、大変だったのね。で? 私に頼みたいことって何なの?」

 初めに戻って問いかけると、真央はガシッと唯の手を両手で握り締めて。

「…唯ってさ。こないだの模試で、志望大学、A判定出たって言ってたわよね?」

「え…うん」

 担任教師にも、「このままの調子で行けば、合格間違いなし」と太鼓判を押されて、ようやく安心したところだった。まだ下に弟も妹もいるので、できるだけ親の負担にならない大学に入るため、頑張った結果だった。

「お願い! あたしともう一人で一年生にマネージャー業を仕込みきる間だけでいいから、臨時マネージャーとして手伝ってほしいのっ!」

「えーっ!?

「あたしの引退前に、スコアの付け方とか、マネージャーとして不可欠な知識を教えなきゃならないんだけど、そっちばっかりやってると、雑用のほうまで手が回んなくて……二年のコも同級生にあたってみるって言ってるんだけど、確実に見つかるか怪しいし…あたしらの学年じゃ、みんな進学とか就職とかでそれどころじゃないけど、唯なら成績的にも問題ないしっ お願い、唯っ 親友のあたしを助けると思って!」

 確かに唯の成績なら、他の同級生に比べて手伝う余裕もあるが…唐突にそんなことを言われても困ってしまう。

「お願い…もう、唯しか頼れる人がいないの……」

 うるうる…と瞳に涙をにじませる真央の顔が、まだ小さい妹の顔とダブって────真央が気にしているから決して口には出さないが、身長が百五十センチそこそこの真央は、髪形と服装によっては小学生に見えかねないほど、童顔で可愛らしいのだ────自他ともに認めるシスコン・ブラコンの唯には、とても耐えられないほど胸が痛む。

「唯、お願い……」

 しかも「お願い」と懇願までされてしまっては…勝敗はもう、目に見えていた。

「わ…わかったわ…手伝う」

「ほんと!? 唯、ありがとう、大好きーっ!!

 ガバッ!と抱きつかれて、苦しくなってしまう。

「真央や野村くんたちが引退するまででいいのね? それ以上は、さすがに無理よ?」

「うんっ それだけ時間があれば、一年生も何とかなってくれると思うし、後は二年のコにまかせられると思うから」

「ほんとに雑用だけよ? サッカーの専門知識なんて、私にはないし」

「うん、大丈夫っ そういうのは、全部あたしたちでやるから。唯には、サポートだけしてもらえればいいの。それだけでずいぶん助かるからっ」

 本気で涙を流さんばかりに喜ぶ真央に、唯はまあいいかと思う。親友が困っているのを見捨てられる訳もないし、期間限定だというし……。

 そうしてこの日から、唯の臨時マネージャーの日々が始まった。


 話には聞いていたが、これは確かにハードだと唯は思った。

 唯がまず最初に始めたのは、部室の掃除。血気盛んな高校生男子が大多数集まる部屋となれば、汚いのも道理というもので。更にはすさまじい悪臭が漂うとあれば、掃除をしたくてもできないいまの忙しさは、真央たちにとっては口惜しいことこの上ない状況であろう。しかも季節は春────生き物たちが活発になり始める季節だ。置いてあった雑巾と見まがうほど汚れたタオルを持ち上げたとたん、その下から黒い虫が走り出してきた時には、唯はもう少しでホラー映画のヒロイン並の悲鳴を上げるところだった。

「おー。悪いな、小林ー。受験生なのに、手伝わせちまって」

 ジャージに着替え、口元を大きなマスクで覆って掃除をしていた唯の元に、真央に事情を聞いたらしい野村拓馬(のむらたくま)がやってきた。真央と友人でもある彼とは、一応の面識があるので、彼も気軽に声をかけてくるのだろう。

「ほんと、真央の頼みでなかったら、聞いてないところよ。いったいどうやったらここまで汚せる訳!?

 唯にも弟はいるが、ここまでずぼらではなかった気がする。

「いやー、めんどくさくてほっといたらいつの間にか…な。…しっかしいまどきの一年は根性ねえよなあ。ちっとキツいこと言ったぐらいで、さっさか辞めちまうんだもんよ」

 野村がそう言ったとたん、すさまじい勢いで野村の身体が傾いだので、驚いてしまう。

「うおっ!?

「誰のせいだと思ってるのよ、この大馬鹿っ!!

 どうやら、いつの間にか野村の背後に迫っていた真央が、力いっぱい跳び蹴りを食らわせたようであった。長身の野村の身体に隠れて、まるで気付かなかった。

「いって…大槻、てめえっ」

「何よ、やる気!?

 真央はすっかりファイティングポーズだ。その小さな身体と可愛らしい顔にだまされがちだが、実は真央はかなりの武闘派だ。痴漢に遭いかけて、その相手をぶちのめしたことも、一度や二度ではない。唯が一緒にいる時は体格の差で何とか止められるが、そうでない時に通行人や警察官に止められたことも多いらしい。

「はいはい、ケンカしてる場合じゃないでしょ!? 私みたいなピンチヒッター呼ばなきゃならないほど忙しいんじゃなかったの!?

 手をパンパン!とたたきながら止めると、二人は不承不承といった体でそれぞれの場所に戻っていく。まったく、世話の焼ける連中だ。二人の後ろ姿を見送ってから、唯も自分の作業を再開した。

 そして。

「うわあ〜、すっかり遅くなっちゃったわねえ」

 初日ということもあって、終わる時間はまったく読めなかった。今日の分の作業を終えて着替えて出てきた頃には、外はすっかり暗くなっていて。電車通学の唯は、これから乗るであろう電車の混み具合を想像して、思わずうんざりしてしまった。時間的に、仕事帰りのサラリーマンたちで埋め尽くされているであろう時間帯だったからだ。

「唯ー、遅くまでほんとごめんねー」

 さすがに真央の前では嫌そうな顔を見せられなくて、ぱっと笑顔を見せて応える。

「ううん、大丈夫よ」

「お詫びと言っちゃ何だけど、満員電車に乗らなくて済むよう、アシを手配しといたから」

 …アシ? まさか、タクシーなどを呼んだのではあるまいな!?

「ちょっと、真央…アシって……」

 そこまで言ったところで、短く鳴り響く車のクラクションの音。

「あ、来た」

「真央、迎えに来たぞ」

 近くの校門の前に停めた車の中から出てきたのは、背の高い若い男性。

 それが、唯と一哉の出会いであった──────。


   





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2017.1.1up

意外なところで意外な再会を果たしたふたり。
はてさてこれからどうなりますことやら。



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