まだいくらかぼんやりしている視界の中、少しずつハッキリと見えてくるのは…誰よりも愛しいひと。 「ギィサリオン…さま……?」 「セレスティナ!? 俺がわかるか!?」 「…はい…」 他の誰を忘れようと、このひとだけはきっと忘れることはできないだろうと思うほど胸の奥に刻み込まれた存在は、ようやく安堵したような、泣いているのか笑っているのかわからないような複雑な表情で、自分をまっすぐに見つめていた。ほとんど無意識に、「泣かないで」と唇が声にならない言葉を紡ぐ。 「少し…ほんの少しだけ、待っていてくれ。ご家族の方や、医師を呼んでくるから」 そう言って、名残惜しそうに手を離したギィサリオンが部屋を出ていくのを見届けてから、ゆっくりと首だけ動かして周囲を見回す。もう、二度と還ってはこられないだろうと思っていた自分の部屋────幼い頃から見慣れた天井、壁、窓、そして寝台。一瞬、夢かとも思ったけれど、その後怒涛のごとく駆け込んできた両親や兄姉、乳母や医師たちのけたたましさに、これは夢ではないとすぐに実感することができた。 「……ここまで回復できれば、もう、心配はありません。このままゆっくり療養していれば、いずれ平常の状態に戻れるでしょう」 診察の後、そう告げた医師に、家族や周囲の者だけでなくギィサリオンまでが深い安堵の息をついたのが見えた。あの戦いの後半頃にも思ったが、いまのギィサリオンはあの頃より更に痩せたように思える。憔悴しきっている、と言ったほうが正しいだろうか。 「とにかくまだ、目を覚ましたばかりなのだ。今夜はもう少し、休むといい」 そう言って、頬を撫でてくれる父の大きな手が心地よい。 「でももう少しだけ…せっかくずっとついていて下さったのだから、ギィサリオンさま、もう少しの間だけ、この子についていて下さいませんか?」 母がそう告げるのを聞いた姉たちの目が、きらりと光った気がした。 「そうね、お母さまっ こんな大人数でいつまでもいたら、ティナも疲れてしまうでしょうからっ」 「さっ お父さま、兄さまたちもまいりましょうっ!」 そう言って、ギィサリオンの返事も待たず、女三人で彼以外の人物を押し出すようにして部屋から出ていってしまった。後には、唐突に訪れた静けさと、寝台に横になったままのセレスティナ、そして途方に暮れた様子のギィサリオンだけが取り残される。 「あ…と、その……」 何となく居心地の悪さを感じているような、そんな戸惑いを含んでいるような声がギィサリオンの唇から紡がれる。 「とにかく……生きていてくれて…よかった──────」 絞り出すような、聞いているだけでこちらの胸まで締めつけられるような切ない声だった。 「…心配をおかけして…申し訳ありません…………」 こうして、これが現実だと認識したいまでも、あの時のことを思い出すと心臓が凍るかと思うほどだった。自分の痛みよりも、ギィサリオンが死ぬかも知れないと思ったあの時の恐怖は、きっと一生忘れられそうにない。 「もし貴女がいなくなったら……俺は、自分でこの命を絶つつもりだった」 「!?」 セレスティナは、自分の耳を疑った。まさかギィサリオンまでも、自分と同じことを考えていたとは、夢にも思っていなかったから。 「私も……同じ気持ちでした…………」 思わずそう答えた瞬間、ギィサリオンがはじかれたように顔を上げて、ゆっくりとセレスティナに向かって歩み寄ってきた。 「ならば……ふたりとも、生きていられてよかったというべきか…」 またしても、あの泣き出しそうな瞳。 「……頼むから…もう二度と、あんな無茶をしないでくれ─────」 無茶、とは、あの時の、みずからの血を用いてサラスティアの刃からギィサリオンを守った時のことだろう。とっさだったので、あんなことをしたら自分がどうなるかなんて、考えたこともなかった。 セレスティナの体温を確かめるかのように頬に添えられた手に、何よりも愛しく思いながらみずからの頬をすり寄せる。 「…ごめんなさい──────」 自分が彼を護りたいと思っているように。彼も、自分を思ってくれているのだとしたら、セレスティナのあの行為は彼にとってどれほど残酷な行為だったのか。彼の、血の気がひいたように冷たい指先を実感すると、いまさらながらに申し訳なく思う気持ちで心がいっぱいで、涙がこぼれそうになる。またしても自分は、自身のことしか考えていなかったのかと、恥ずかしくさえ思えてくる。 「もう、戦いは終わったのだから、あんなことには絶対ならない。いや、させない。俺のすべてをかけて誓う」 そういえば……あの戦いを終わらせることができたのは、アナディノス王が崩御されたからだと、薄れゆく意識の中で聞いた気がする。そのことについて訊いてみるとギィサリオンは、一瞬言葉に詰まってから、少し考える素振りを見せながら答えてくれた。 「そのことについては、もう少し身体が回復してからゆっくり話すとして……もう、何も危険はないのだから、いまはとにかく身体を癒すことに専念してほしい。あまり長居して疲れさせてもいけないから、俺は今宵はもうおいとますることにしよう。少しの時間でもいいから逢いたいから、また明日から合間を見て訪れることを…許してもらえるだろうか」 許すだなんて……むしろ、こちらのほうが毎日でもギィサリオンの顔が見たいぐらいなのに。 「そんな…っ 私のほうこそ……ギィサリオンさまにお逢いできないのは辛いのに…………」 恥ずかし過ぎて、語尾は立ち消えになってしまったけれど、ギィサリオンにはちゃんと通じたらしい。優しい瞳で微笑んで、そっと額から顔へとかかっていた髪を払ってくれる。その後に続くのは、やわらかな、手とはまた違う温もり。 「え……」 「お、遅くまで済まなかった! 俺は、これで失礼するっ」 顔を見せないようにしてすぐに向こうを向いてしまったが、ギィサリオンは耳まで真っ赤になっていて……たったいま、いったい何が起こったのか、セレスティナが理解するのにそんなに時間はかからなかった。 「また来るから…どうか、ゆっくり休んでくれっっ」 そう言ってギィサリオンが扉を開けて出ていくのと、セレスティナが内心で悲鳴を上げるのはほぼ同時であった。恐らくはギィサリオンの唇が押し当てられた額を中心に、顔が熱くて仕方がない。よもやまさか、あの慎重なギィサリオンが、そんな行動に出るとは思っていなかったから、驚きもケタ違いだ。恥ずかしかったけれど、嬉しく思う気持ちも確かに存在していて……。「また来る」と告げた彼の言葉を胸に、セレスティナはいままでのどんな時よりも幸せな気分で眠りに就いた。 そして、公務の合間をぬって詫びに訪れてくれたリオディウスの口から、セレスティナはあの戦いが終わったほんとうの理由を知った。まさか…たかだか一国民に過ぎない自分たちのために、あのリオディウスが一国の王、それもみずからと血を分けた双子の兄を手にかけたなんて、本人の口から聞いても信じられなかったけれど。決して激務のためだけでなく、ギィサリオンより更に憔悴しきった様子のリオディウスの顔を見たら、すぐに納得できた。命を救ってもらったことに対する感謝の気持ちは、もちろん存在する。けれど、そのためにリオディウスはもう一生消えない心の傷と十字架を背負うのかと思ったら、とても素直に喜べなくて。帰っていくその後ろ姿を見ていたら、何度か面識のある彼の婚約者である女性に対して、どうか少しでも彼の心を救ってあげてほしいと祈らずにはいられなかった。 皆が同じように幸せになれる世界になればいいのにと、涙をこぼしたセレスティナのそれを拭ったのは、優しいギィサリオンの指だった……。 最初は難色を示していた父だったが、彼の熱意と「昼間の数時間程度なら」という医師の太鼓判、それに母や姉の後押し────あの戦いから帰って以来、母たちはギィサリオンにとても好意的なのだ。もちろん父や兄たちもそうだが、母たちのそれは父たちの倍以上といってもいい────そして何よりも、他の誰でもないセレスティナ本人の強い要望もあって、父もようやく首を縦に振ってくれた。 簡単な弁当と飲み物、それと上着や膝掛けまで持参させられて、ギィサリオンの腕に丁重に抱えられたセレスティナは、家族たちの見送りの元、初めて地の精霊の移動の力をみずからの身で体感することとなった。それは、ほんとうに一瞬のことで、事前にギィサリオンによく言い含められていたのであろう精霊たちの力の波動はとても穏やかで、ほんの少しの揺れすら感じることなく、目的地へと到達していた。 「す…ごい……話に聞いてはいましたが、ほんとうに、一瞬で移動してしまうのですね」 驚きを隠さずに告げるセレスティナに、ギィサリオンも満足そうだ。ゆっくりと大木の傍らにセレスティナを抱えたまま腰を下ろし、みずからの膝の上に彼女の身体を乗せてくれる。 「あ…ここは……」 既に天幕など彼女たちが生活した痕跡は取り払われていたが、忘れもしない風景に、セレスティナの記憶が刺激されて。まるで走馬灯のように、あの頃の思い出が脳裏を順によぎっていく。いまだ、あれからまだ一、二ヶ月しか経っていないというのに。 「もしかしたら、もう来たくなかったかも知れないが……俺にとっては、ある意味忘れられない場所だから。一度は、一緒に来たかったんだ……」 そうだ。互いに互いを想いつつ、自分など相手の心に入る隙はないと思い込んでいたふたりが変わることができたのは、あの戦いがあったから。辛い想いも苦しい想いもしたけれど、あの戦いは悪いことばかりではなかったと、いまならセレスティナもそう思える。 「そう…ですね。いろいろ誤解もして、悲しい想いもしたけれど。私も、ここが嫌いになることは決してありませんでしたもの」 何より、こうしてギィサリオンと共に再び訪れることができたことが、セレスティナには嬉しかった。何かがどこかで違っていたら、もしかしたらこの地でふたり、共に永遠に眠ることになっていたかも知れないけれど。生きて、こうして温もりを分かち合えることが、何より嬉しい。 「……そして。ここでこそ、改めて伝えたかった言葉があるんだ。セレスティナ」 「はい?」 ふいに名前を呼ばれ、顔を上げると真剣極まりないギィサリオンの黒い瞳が視界に飛び込んできた。セレスティナの胸が、どきりと高鳴る。 「俺は、この世界の誰よりも貴女を愛している。一度は諦めかけたけれど、いまでは絶対に他の誰にも渡したくないぐらいに──────」 ギィサリオンの言葉が、まるで水が土に染み込むように、セレスティナの心の中に響いて……一度は聞いたはずの言葉なのに、セレスティナの青い双眸から涙があふれ始める。 「わ…私も……他のどんな方よりも、貴方を愛しています──────」 涙まじりになってしまったが、やっと口にすることができた。ずっとずっと、ギィサリオンただひとりだけに伝えたかった想いを…………。 「よかった……」 ギィサリオンの腕が、優しくセレスティナの身体を抱き締める。 「やっと、手に入れられた……今度は簡単に散ってしまわない花を」 その言葉に、記憶の一部が刺激される。 降りしきる雨の中、無残にも散っていく小さな一輪の花──────。 思い出すだけで…あの時彼にどんな想いをさせたかと思うだけで、涙が更に溢れそうになる。 「もう二度と……あんな、馬鹿なことは致しません…………」 セレスティナの涙をそっと指で拭いながら、ギィサリオンが優しく微笑んでくれる。 「ならば…ついでにもうひとつ約束してはもらえまいか」 「私にできることでしたら、何なりと」 「その…敬語を、やめてもらえないだろうか。できれば俺のことも、敬称などなしで呼んでほしい」 「え……」 予想もしていなかったことを言われ、セレスティナの頬がかすかに赤く染まる。 「サラスティア嬢のように、とまでは無理だろうが、できればもう少し打ち解けてもらえると……嬉しいのだが」 そんなこと、考えてもみなかった。サラスティアはほとんど生まれてからのつきあいの従姉妹で、同性の、親友といっていいほどの相手で……ギィサリオンから見ればジィレインのような存在なのに、そんな相手にまるで嫉妬のような言葉を恥ずかしそうに、あのギィサリオンが口にするなんて。 驚くと同時に、とてつもない恥ずかしさも襲ってくるけれど、嬉しく思う気持ちは止められなくて……。 「ぜ…善処、します……」 身に染み込んだ習慣を改善するには、恐らく時間もかなりの労力も要するだろうけれど……それがギィサリオンの望みなら、自分にできる限りの努力は惜しまないつもりだった。 それを聞いて安心したのか、セレスティナの顔のそばでギィサリオンがふ…っと微笑む気配。それを確認しようと顔を上げる前に、顎に優しく指をかけられて、そっと上を向かされてしまっていた。声を発する前に、近付いてくる彼の顔。何も言われなくても、どうすればよいのかセレスティナはわかるような気がして、そっと瞳を閉じる。やがて唇に触れる、やわらかな温もり。生まれて初めての体験だったおかげで、緊張の度合いは額の時の比ではなかったけれど、ほとんど無意識に彼の服の胸元を掴んでいた手をそっと上から別の温もりに包まれたら、自然と張り詰めていた緊張が解けていく気がして……全身の力を抜いて、ギィサリオンにすべてを委ねていた。 唇が離れた後は、恥ずかしくて顔が上げられず、ギィサリオンの胸に身をまかせたまま黙ってしまったけれど、それはギィサリオンも同じだったようで、彼の胸に当てた耳に届くのは、自分同様激しく高鳴る心臓の鼓動。同じなのだ、と思うと同時に、とたんに心が軽くなって……いままでの他のどんな時よりも大きな幸福感が、心を満たしていく。 ふたりの間を、優しい風が吹き抜けていった…………。 「一応お前んちにも挨拶に行ったんだけどさ、ほとんど毎日こっちに入り浸りだっつーから、ティナちゃんと一緒にでいいかと思ってさ」 そうからかうようにギィサリオンに言うのは、ジィレイン。ギィサリオンは、返す言葉もないようで、軽くにらみつけるような目でジィレインを見返す。 「で、サラもジィレインさまも…何か言いたいことがあってこちらに来られたのではないのですか?」 その言葉に、ハッとして口火を切ったのはサラスティアだった。 「ああ、リオディウス陛下や互いの家族にはもう許可を得てきたんだけどさ。あたしら、これからしばらく旅に出るから」 「旅!?」 「ふたりだけでか!?」 「そう。移動は風の力でさ。たとえ人が住んでない、魔物が闊歩する地域でも、ふたりでなら何とかなるかと思って」 「このままここに留まって、親の思惑通りに嫁に行かされるぐらいなら、これと自由気ままに旅するほうが断然面白いかなと思ってね」 「『これ』って、ひどくね? サラちゃん」 ジィレインが情けない声を上げて弱々しく抗議するが、サラスティア本人は涼しい顔だ。 「でもサラ…いいの?」 「何が?」 けろりとして聞き返してくるサラスティアの耳に、セレスティナはそっと唇を寄せて。 「だって…ジィレインさまは、まがりなりにも男性よ? 万が一にも、危険なことになったりしたら……」 セレスティナの言いたいことなどとうに考慮済みだったらしいサラスティアは、からからと伯母とよく似た豪快な笑い声で高らかに笑って見せた。 「ああ、そのへんは大丈夫よ。もしも、無理やり何かしてくるようなことがあれば、遠慮なくぶち殺していいって誓約書もちゃんと書かせてあるし。とどめに、リオディウス陛下直通の通信手段もあるしね」 そう言って、サラスティアがかざした手のひらから発して見せたのは、小さな螢火ほどの炎。 「これ…?」 いつものサラスティアの炎とはどこか違う気がして、セレスティナは思わず首を傾げる。 「リオディウス陛下直々に賜った、連絡用の炎よ。これを扱えるのはあたしだけだから、奴があたしに対して悪さをはたらこうものなら、これに念を送ればすぐにでも陛下から天誅を下していただけるって訳♪」 「まあ」 楽しそうにサラスティアが説明する肩越しで、ジィレインがギィサリオンの肩に腕を乗せて嘆いているのが見えた。 「あれだもんよ、俺どこまで信用ないんだよ?」 「まあ、自業自得…じゃないのか?」 と、ギィサリオンはセレスティナにはよくわからない答えを返していたので、セレスティナはますます首を傾げてしまう。 「お前までそういうこと言うのかよ〜っ」 「まあ、信用してるわよ? 一応は。じゃなきゃ一緒に旅に出ようなんて思わないし」 サラスティアのにっこり笑顔。それを見たセレスティナは、おやと思う。 「『一応』〜?」 ジィレインは不服そうだが、ほんとうに好意をまったく抱いていなければ、サラスティアはこんな風に笑ったりはしない。彼女に少しでも嫌悪感を抱かれた者は、もっと皮肉めいた笑顔を向けられることを、長い付き合いの中でセレスティナはよく知っているから。 「ほら、いつまでもいじけてないの! 早く旅立たないと、遅くなっちゃうでしょ!?」 「へーい」 ようやく立ち直ったらしいジィレインは、サラスティアと共に皆に丁重に挨拶をして家の出入り口に向かったので、セレスティナはギィサリオンとふたり、その後に続いた。扉を開けて庭に出たところで、ジィレインがセレスティナに向かってくるりと振り返った。 「……ティナちゃん。あん時は、ほんとに済まなかった。もしかしなくても、傷跡とか残っちまってるんじゃねえ?」 ほんとうに申し訳なさそうな表情でジィレインが言う「あの時」とは、いつのことを指すのか、セレスティナにはすぐにわかった。だから、すぐにかぶりを振って見せる。 「いいえ。あの頃は、誰もがどうしようもできない渦中に巻き込まれていたのですから。誰が悪い訳でもありませんわ」 「そう言ってもらえると、俺も少しは気が楽になるけどさ……」 そこに口を挟んだのは、やはり楽しそうなサラスティアだった。 「だ〜いじょうぶだって。たとえ傷跡が残ろうが、ティナには文句なしで嫁にもらってくれる相手がいるんだからさっ」 これにはさすがに、セレスティナと共にギィサリオンの顔も真っ赤に染まった。 「普段は頑固一徹なくせに、肝心な時にはとたんにヘタレになる誰かさんが、求婚までなんてたどりつけるのかねえ?」 同調して楽しそうに言うジィレインを、ギィサリオンがじろりと睨みつける。 「まっ 定期的に風に乗せて便りを送るからさ。結婚式にはちゃんと呼んでくれよな、そん時には速攻で帰ってくるから」 そう言って笑うジィレインとサラスティアの身体が、風によってふわりと舞い上がる。用心のためであろう、サラスティアの肩と腰にさりげなく手を添えるジィレインと、またそれをまるで嫌がる素振りを見せないサラスティアに、セレスティナはこのふたりならきっと大丈夫であろうと確信した。 「それじゃあな、またそのうちひょっこり会おうぜーっ」 「そっちも元気でねーっ」 笑顔で去っていくふたりを見送って……いつの間にか自分の肩に優しく手を回されていたことに気付いたセレスティナは、かたわらに立つ存在の胸にそっと身を寄せて……愛しく思う想いをこれ以上ないというほどに込めて、微笑んでみせた。それに即座に返るのは、誰よりも愛しいひとの優しい笑顔。 自分たちも、彼女たちも、皆幸せになれたらいい。そう願ったセレスティナの思いは、決して裏切られることはなかったのである────────。 |
2012.5.23up
ついに、セレスティナたち側の最終回です。
皆が幸せになるための物語は、これから始まるのかも知れません。
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